マンガが原作! ドラマ「梨泰院(イテウォン)クラス」に見る、韓国マンガの脅威!~韓国マンガ家の収入源も解剖!~
「梨泰院(イテウォン)クラス」
皆さんは、このドラマをご存知でしょうか?
2020年1月から韓国で放送されたこのドラマは、そののち日本でも動画配信サービスNETFLIXにて配信され、日本でのNETFLIX視聴数ランキングではいまだに上位にランクインしている大ヒットドラマです。
ネットフリックス 梨泰院クラス公式サイト
https://www.netflix.com/jp/title/81193309
これまで韓国ドラマが日本で流行したことはありましたが、この「梨泰院(イテウォン)クラス」の特筆すべき点は韓国発のウェブトゥーン、いわゆるWEBマンガが原作のドラマという点です。
日本ではマンガ原作の映画やドラマは数え切れないほど多くありますのであまり珍しいことではありませんが、韓国マンガが原作のドラマが、日本でヒットするという構図は今後新しい流れを産みだす予感があります。
今回はその韓国で一大ムーブメントになっているウェブトゥーンと、ウェブトゥーンがドラマ化されて、ヒットしていった流れを、ドラマ「梨泰院(イテウォン)クラス」を通して見てみたいと思います。
まず「梨泰院(イテウォン)クラス」を注目すべき理由の一つにその内容にあります。
ではこの「梨泰院(イテウォン)クラス」のストーリーを簡単に解説していきましょう。
梨泰院クラスとはどんなドラマ?
まずタイトルの梨泰院(イテウォン)とは何か、と言うところですが、梨泰院(イテウォン)とは韓国の首都ソウルにある、地区の名前になります。
日本で言えば、新宿とか渋谷がそれに当たるのではないでしょうか。
ちなみにこの「梨泰院(イテウォン)クラス」、ピッコマというアプリで配信されてる、日本版のマンガは「六本木クラス」とタイトルが変えられており、実際に物語の舞台も、梨泰院から六本木にローカライズされています。
つまり“梨泰院(イテウォン):日本で言う六本木のような場所で、若者たちが成り上がっていく物語”。すごく簡単に言うと、こういうストーリーです。
梨泰院クラスがヒットした要因①王道の少年マンガ的要素
日本で成り上がると言うと、拳一貫、裸一貫と言った感じでスポーツや任侠モノといった派手な舞台を想像しがちですが、梨泰院クラスの舞台はタンバム(甘い夜)という小さな”居酒屋”が舞台です。
主人公はこの居酒屋を一から立ち上げた店長のパク・セロイ。セロイは努力家でこの居酒屋を開くために、過酷な遠洋漁業で、何年も漁船に乗りながら、お金を貯めます。
そして苦労の末、開店した、このセロイが経営する小さな居酒屋が韓国最大の居酒屋チェーンであるチャンガ(長家)グループを倒す。つまりチャンガグループよりも大きな会社に、成り上がっていくことが、梨泰院クラスのストーリーの主軸になります。
さらにこのチャンガグループの会長と主人公パクセロイの間にはある因縁があり、お互いがバチバチの関係という設定、つまり分かりやすい敵対関係、勧善懲悪、復讐といった、主人公の成り上がりたい動機が分かりやすく描かれています。
実はこういう”飲食業界”を舞台にしたマンガやドラマはあまりなく、新しい設定とストーリーだと言えます。
無理やりカテゴライズすると、ビジネスバトルものだと言えるのではないしょうか。
ストーリーの中では、SNSを使ったり、TV番組に出たり、料理の腕を磨いたりと、実際に飲食店が繁盛して、大きくなっていく手法とリンクするように、どうやって小さな居酒屋が成り上がっていくかをしっかり描いています。
またそういった成り上がりの中で、居酒屋の従業員たち”仲間”とともにそれぞれの個性や特技を駆使して、時には仲たがいしながらも成長して、強大なチャンガグループを倒していくのです。
よく言われる、王道の少年マンガに含まれる三大要素”努力” 勝利” ”友情”を、この梨泰院クラスでも描いていることが、日本でもヒットした要因の一つだと言えるのではないでしょうか。
梨泰院クラスが日本でヒットした要因②王道の韓国ドラマ的要素
一方、日本で「梨泰院クラス」がヒットしたもう一つの要因に、日本人も熱狂させる、韓流ドラマ特有の”恋愛要素”が、この梨泰院クラスでも、もう一つの主軸として描かれていきます。
実は日本の王道少年マンガでは、恋愛要素が主軸に置かれることは、あまりありません。例えばワンピースやドラゴンボール、鬼滅の刃といった国民的少年マンガも恋愛こそありますが、告白して、熱く抱擁を交わしてキスシーンなどは全くなく、どこかあっさり描かれていきます。
梨泰院クラスでは、主人公セロイと、居酒屋の女性従業員のイソ、敵であるチャンガグループの女性社員スア、この三人の、いわゆる三角関係がドラマを彩り。視聴者の中では、この三人の恋愛の行く末が見たくて、ドラマを最後まで観たという人も多くいるのではないでしょうか。
こういった少年マンガの要素と韓国ドラマの王道的恋愛要素が上手くあわさって、化学反応を起こしているのがこの「梨泰院クラス」と言えます。
韓国のマンガ市場を大きく発展させた、”ウェブトゥーン”とは
ここで話を最初に戻しますと、その面白さや、日本でヒットした要因を解説してきました「梨泰院クラス」は韓国のウェブトゥーン発であることが、今回最も注目したい点になります。
そもそもウェブトゥーンとは何か。日本ではウェブトゥーンという言葉は、あまり聞きなじみのない言葉かと思われますが、ウェブトゥーンは簡単に言えば”パソコンやスマホで読めるマンガ”を指します。
日本でも”パソコンやスマホで読めるマンガ”はあるのに、どうして日本でウェブトゥーンとあまり言われないのか?そこには、日本のマンガの特性が見えてきます。
まず日本のマンガとウェブトゥーンとの違いを見ていきましょう。両者の特徴を並べてみると、違いがよく分かります。
日本マンガの特徴
- 出版社が主導している
- 雑誌に載ることを前提としているため、右ページから左ページに向かって読む
- 横読み形式が主
- 週刊連載が多く、印刷を前提とし、アナログ作画が多くを占めるため
- モノクロ着彩が主
ウェブトゥーンの特徴
- LINEの親会社であるNAVERなど、IT企業が主導
- スマホで読まれることが前提のため、縦読み形式
- ウェブでの配信、デジタル作画が多くを占めるため
- カラー着彩が主
といった感じで、違う点が多くあることが分かります。
特に①の出版社が主導と言うところは、ウェブトゥーンが日本であまり広がらない大きな要因として挙げられ、週刊少年ジャンプで2016年から連載され、爆発的人気を得た「鬼滅の刃」も単行本の発行部数が1億部を超えたことでも分かるように、“単行本を買ってマンガを読む”という習慣、または出版社が発行するマンガ雑誌から、人気作が生まれるという流れはまだまだ日本では根強いということが分かります。
ちなみに日本でのウェブトゥーン市場を見てみると、韓国のNAVER corporation 子会社であるLINE社による【LINEマンガ】と、同じく韓国のカカオの日本法人が運営する【ピッコマ】。
この二つのサービスが、日本でのシェアの7割近くを握っている背景を見ると、いかに韓国がマンガ市場において、影響力を拡げているかが感じ取れます。
ただ日本発で、ウェブトゥーン形式のマンガは、マンガアプリを通して発表されていますが、まだまだ、ジャンプ作品のような人気を獲得しているとは言い難いです。
まだウェブトゥーンがわからないという方はウェブトゥーンを読んでいただく方が、一番分かりやすいと思いますので、韓国や中国の、ウェブトゥーンを集めた主な人気サイトをご紹介します。
韓国:NAVERマンガ
https://comic.naver.com/index.nhn
中国:テンセントコミック
https://ac.qq.com/
そしてこのウェブトゥーンが、どれほど人気かを数字で表すと、
【NAVERマンガ】
・2018年の時点で月間利用者数は4,600万人
・70ヵ国でナンバーワンの地位を確立しているグローバルウェブマンガサービス
・オリジナル作品数は2300タイトル
・計120万タイトルをグローバルに配信
中国のテンセントコミックにいたっては、2017年の時点で月間アクティブユーザーが日本の人口に匹敵する、1億2000万人。1日の閲覧数10億回を超え、作者も5万人まで増加しています。
数字だけ見ても、日本の10倍以上の人口を有する中国は桁が違う利用者数だと分かります。
もう一つの変革、ウェブトゥーン漫画家への新たな収益モデル!
マンガ家のお金事情で、よく知られているキーワードが”印税”ではないでしょうか。日本では“夢の印税生活”などと、表現されることもあるほど、ヒットすれば、夢がある世界だと言われています。
現在韓国でも、マンガ家はいわゆる”稼げる職業”として、現在韓国国内で、12万人にもおよぶ作家志望者がいると言われています。
では主にWEB上で展開するウェブトゥーンでは、どう作家への収益化がされているのか?
ウェブトゥーン作家の収入源は、大きく4つ分けられます。
1:原稿料
2015年に文化体育観光部が発表した報告書によると、NAVERなどの場合
・新人作家で月120~200万ウォン=約11~18万円
・中堅作家で月280~320万ウォン= 約26~30万円
・人気作家では月500~600万ウォン=約46~55万円
ほどだと公表されています。
これは日本と同じように掲載されているサイトによって設定されている原稿料は違います。
2:印税
日本と同じく、WEB上で公開されたマンガは単行本化され印税が支払われるシステムです。
日本では単行本がいまだ根強い人気があるため原稿料以上の収益が見込めますが、韓国では、WEBが主流ですので、原稿料の方が、印税より収益が高い作家さんが多いそうです。
また連載が完結した作品は、WEB上で有料に転換されることもあり、その収益の一部も作家さんに還元されます。
3:2次創作物による収入
こちらも日本と同じように、ドラマ・映画・アニメ・ミュージカル化、あるいはグッズ化された際の、いわゆる著作権収入です。
日本では「鬼滅の刃」のようにアニメ化されたことによって、マンガに火がついたり、多くの少女漫画が実写ドラマ化されるなど、マンガをメディアミックス展開して、多くのムーブメントを産んでいます。
韓国でも、梨泰院(イテウォン)クラスのように、ドラマ化され海外にも輸出された作品など、著作権収入での大きな収益が見込める流れになってきています。
4:間接広告収入
ウェブトゥーンが、マンガ家に新たな収益をもたらしているのが、この間接広告収入だと言われています。
間接広告収入とは、多くの作家さんたちが、作品の中に特定の企業の商品などを登場させたり、弊社マンガビズで制作しているような、広告マンガを描いて収入を得、NAVERだと50%以上の広告収益を作家に配分しているとのことで、間接広告収入だけで1ヶ月間で7,800万ウォン=約700万円を稼ぐ作家もいるとのことです。
さらに韓国ではヒットした作家自身が、タレントのようにバラエティー番組などに出て副収入を得るようなケースも出てきています。
このようにして高収入を稼ぐマンガ家増えたことによって作家志望者も急増。
NAVERマンガの場合だと、12万人の無収入作家が活動し、その中で、広告収入を得ているのが、わずか2000人ほどだそうで、倍率800倍と、韓国でも狭き門になっています。
マンガをWEBで見るようになったことで、今後もWEBならではの収益モデルが産まれていくことが予想されます。
読者、作家、ディレクションしている企業、それぞれがマンガによって幸せになる収益モデルが望まれます。
まとめ
これだけの大きな流れが、近く海を挟んだ、アジアの国で起きていれば、その流れが日本にも流入してくるのは必然なことなのかもしれません。
韓国の音楽や映画、ドラマが海外に輸出され、アメリカや日本でも大きな影響を与えている流れから見ても、次は韓国のマンガが、日本に影響を与えるのは時間の問題ではないでしょうか。
その門を開いた作品が「梨泰院クラス」と言っても過言ではないと言えます。
今後はウェブトゥーンからジャンプ作品のような大ヒット作品が生まれたり、ウェブトゥーン原作のドラマや映画が、日本でも制作されて、大ヒットすれば、ウェブトゥーンは大きな流れを日本で産むことになるでしょう。
もちろん日本のマンガであれ、韓国のマンガであれ、“面白いかどうか”が決めてになることは共通して言えることです。
世界一のマンガ大国である日本、そしてその日本のマンガ家たちの技術も、まだまだ世界一を誇ると言ってもいいと思いますが。
果たしてその牙城が揺らぐことはあるのか、この流れが大きなムーブメントを産むか楽しみですね。
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