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広告マンガの強みに迫る(3)記憶に残りやすい

広告マンガの強みに迫る(3)記憶に残りやすい

マンガを読むと馬鹿になるは嘘!?

よく聞く話として、マンガを読むと馬鹿になるという話があります。
背景には、多くの娯楽マンガのコンテンツが世界的に人気になるほど魅力的で、時として子どもの勉強時間を削ることにつながるということが挙げられるでしょう。
一般論としては、勉強時間が短ければ短いほど学校での成績が下がるため、マンガを読むと馬鹿になるという発想が生まれるわけです。

しかしながら、仮に娯楽マンガを読み過ぎて学業成績が低下したとしても、学校での成績は知能とイコールではありません。
実際、ある実験では、有名文学作品のマンガ版とマンガ版のテキストのみを抜き出したものを見せ、内容の定着度を測ったところ、短期的にはテキスト版を見た人のほうがよかったものの、長期的な定着度ではマンガ版を見た人のほうがよい結果が出たというケースが報告されています。
これは、脳科学的にはマンガは文章と絵を両方含んでいるため、右脳も活用され、双方的に記憶が強化されるからだということです。

さらに、カリカチュアに代表されるように、マンガでは写真に比べて情報のエッセンスが抜き出され、特徴が強調されます。
このため、別のケースでは人探しにおいて写真を見せられた人よりも、マンガイラストを見せられた人のほうがよい結果を出したという事例が報告されています。
専門家によると、このような結果になったのは情報量の多い写真よりも、デフォルメによって本質的な部分の特徴が際立ったマンガのほうが強く印象に残りやすかったからだそうです。

このように、マンガは人の印象に残りやすい工夫が施されているため、脳科学的にも長期的に物事を記憶するのに、写真や文章に比べて優れた効果があることが発見されつつあります。
また、教育マンガのように、学習教育にマンガが応用される例もあります。
これらのことからわかるように、マンガを読むことで必ずしも馬鹿になるとは限りません。
むしろ物事を記憶するにあたっては、マンガは他の媒体に比べ優れた特徴があるとすらいえるのです。

どうしてマンガは長期記憶に向いているのか

それでは、どうしてマンガは、長期的に物事を記憶するための媒体として優れているのでしょうか。

エピソードになっているから

マンガの多くは、物語がはっきりしています。
4コママンガのような短いものでさえ、各コマで起承転結または序破急があり、最後のコマでは何らかのオチがついてくるものです。
このような内容は、ストーリー性のない内容よりも人間の記憶に定着しやすいといわれています。

それは、人間の記憶の脳科学的なメカニズムに深く関連した理由によるものです。
人間の記憶は保存期間の観点からは長期記憶と短期記憶、内容の観点からは意味記憶とエピソード記憶に大別されます。
短期記憶は主に海馬と呼ばれる脳の部位に一時的に保存される記憶です。
その保存期間は短いものでは数秒、長いものでも数日以内であるため、ほとんどのものは短い期間で忘れ去られてしまいます。
これは、人間の脳がすべてのことを記憶するだけの容量を持っておらず、記憶するべき情報を取捨選択する機能を備えているからです。

記憶力がよいことは一般的にはよいことであるかのように思われがちです。
しかし、研究結果によると、実は記憶力がよすぎると、例外的な状況を無視することができなくなり、物事を一般化したり、法則化したりする推論能力が正常に働かなくなるという弊害があることが知られています。

記憶を捨て去ることには、嫌なことを忘れ、ストレスを軽減する目的もあります。
試しに日常の些細なことまで毎日毎日正確かつ鮮明に思い出せる状況を想像してみてください。
ちょっとした口論やタンスの角にぶつけた指の痛み、満員電車特有の過密状況によるストレスをすべての日について、わずかな状況の違いまで正確に思い出せるとしたら、うんざりして気分が滅入ってくるのではないでしょうか。

人間が記憶を取捨選択するのは、個々の事例を正確に覚えるよりも、社会や自分の周囲の環境を取り巻く大枠での仕組みを把握したほうが、刻々と変化する状況に対応するにあたっても、ストレス対処においても、生存戦略として適していたという進化の結果なのです。

こうして、短期記憶の大部分は破棄されますが、そのうちの一部は長期記憶として側頭葉に保存されます。
長期記憶は数ヶ月から数年単位で保存され、場合によっては一生ものの記憶になるような記憶です。
このような記憶に残りやすいのは強い印象を与える情報だとされています。
これは、生存戦略において強い印象を受ける大きな刺激であればあるほど、なんらかの重要な意味を持つ可能性が高いと判断されるからです。

そして、より強い印象を与えやすいのは、エピソード記憶だといわれています。
意味記憶は知識として丸暗記されるような事項で、一夜漬けのような短期記憶として覚えさせるのには適しています。
しかしながら、意味もわからずに丸暗記した知識は与える印象が弱いため、長期的にはその内容を組み立て、ストーリーとしてエピソード化したエピソード記憶のほうが定着率は高くなるのです。

そして、マンガでは最初からすべての内容がストーリー化されていますから、内容はエピソード記憶として入ってきます。
その分だけストーリー化されていない単語帳のような意味記憶媒体に比べ、記憶は長く定着することになるのです。

イラストと文字の組み合わせだから

人の印象に強く残りやすい記憶のもう一つの特徴は、人間の脳のより多くの領域を活性化させることにあります。
一般に言語情報は左脳で、絵画や音楽などの非言語情報は右脳で処理されます。

マンガはイラストと文章を両方組み合わせたコンテンツです。
このため、写真だけや文章だけのコンテンツに比べ、マンガは左右両方の脳を活性化させることとなります。
したがって、このことからもマンガは情報を長期記憶させたい際には適したメディアだといえるのです。

記憶に残りやすいと何がよいのか

受験勉強の語呂合わせや音読法など、受験関連産業では、多くの記憶力向上術が提唱されています。
また、ビジネスパーソン向けにも毎年何冊もの記憶力向上術を扱ったノウハウ本や自己啓発本が出版されています。
それらの本などで扱われている記憶力向上法の観点は、主に能力そのものの向上を図るアプローチとコンテンツの扱い方の工夫で、能力はそのままに記憶に残しやすくするアプローチの二つです。
そして、受験業界でも自己啓発業界でも、どちらのアプローチもそれぞれ大きな関心を持たれています。

これらのことからわかるのは、一般に記憶力は向上させたほうがよく、記憶に残るコンテンツのほうが優れていると考えられる傾向があるということです。

これは、ビジネス広告としてマンガを活用して、記憶に残りやすくする場合にも当てはまります。
記憶されやすいコンテンツは、エピソード記憶などストーリー性が強いものが多く、語呂にも見られるように連想性に優れています。
マンガによって長期的にエピソードを記憶させておけば、マンガとは異なる場面で企業の名前を見たとき、そのユーザーがマンガとの連想によって企業名を思い出す可能性が高まるでしょう。

そしてそのマンガの内容が魅力的であれば、マンガ広告を出していた会社の製品やサービスを利用してみようという気を起こすことにもつながります。
このように、記憶に残りやすいコンテンツ、特にマンガ広告を使うことには、その広告をクリックした人から得られる短期的で直接的な広告効果以外にもマンガを見たがある人たち全体に影響し続ける、長期的で間接的な広告効果もあるのです。

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