広告マンガの作り方 7)コマ割りの注意点
コマ割りとは漫画におけるページの中に配置するコマの割り方です。コマ割りと一言で言っても、絵柄と同じくらい重要で、時には作家性が出る奥が深いものでもあります。
絵が描けても、このコマ割りがなかなかうまくできない人もいます。
逆に絵がそこまで描けなくても、コマ割りができれば、ネームが描ける人もいます。
今回は縦読みマンガや、SNSマンガではなく主に、マンガ雑誌や単行本などで見られる横読みマンガのコマ割りを解説いたします。
1: そもそもコマ割りってなに?効果は?
そもそもコマ割りとは、ページを縦・横・斜めなどで区切って区切られた部分を1シーンととらえる漫画特有の手法で、複数のシーンをわかりやすく、また効率よく1ページの中に表現したのがコマ割りと言えるでしょう。
ではコマを割っていないものはマンガとは言えないのか。
例えば1ページに1コマしかない場合や、見開きと言われる、2ページに渡って1枚しか絵が描かれていない場合は、コマ割りと言えるのか。
答えは、どちらもマンガであり、コマ割りであると言えます。
見開きなどは、あくまでコマ割りの演出方法の一つで、コマ割りが全くされていない、一枚絵が続くものは絵本に分類されることがよくあります。
ではなぜコマ割りが必要なのかというところですが、一つ目が、効率・コストの面があります。
例えば、20ページのマンガがあり、1ページ、5コマで割られていた場合、1ページ、1枚描いたとして、50ページもの長さになってしまいます。
もちろん描く方も大変ですが、読むほうもそれだけページをめくる分、大変になります。
また今はデジタルで配信されたりしますが、一昔前は印刷がほとんどでしたので、ページ数が多い分、印刷代も増えコストがかかることになりますし、その分雑誌や、単行本の値段も上がってしまうことになります。
そういった問題から、1Pにより情報を詰め込み、効率よくかつコストを削減するために編み出された手法がコマ割りと言ってもいいでしょう。
もう一つが演出上の理由があります。
あるキャラクターの行動で、周りの人が驚くという一連の流れを”コマを割る”ことによって演出しているわけです。そしてそのことによって、この一連の流れからくる”驚き”をより強調していると言えます。
こういった、コマを割ることでより、その場面のリアリティや、効果、感情などが強調されるよう、工夫されるように進化してきました。
今や、コマの割り方で、作品のクオリティに大きく変わるほど、重要で欠かせないものになったと言えます。
2: コマ割りのルール
コマを割ると言っても、適当にコマ割っていいと言うわけではありません。何十年ものマンガ文化の歴史から、コマ割りの暗黙のルールというものが存在します。
暗黙のルール、その①右閉じ、右から左に向かって読む
今では当たり前のように思われるかもしれませんが、海外では、左から右から読むのが主流で、日本のマンガが海外で出版される場合はわざわざ、左から右に読めるように編集し直すこともあります。
しかしマンガができるずっと前から、日本では、右から文章や本を読むということをしてきたので、マンガでも自然と右から読むということが、暗黙のルールになりました。
右から左に読むということは、必然的に、コマ割りも右上から左下に向かって読みます。Sの字を描くように読まれます。
このルールを無視してしまうと、読者が混乱したり、作者の意図とは違ったかたちで、読者に読まれてしまう危険性があります。
暗黙のルール②三角形のコマは入れない
絶対に使ってはいけないと言うわけではありませんが、三角形のコマを置かない方がいい理由は、三角形のコマの横に四角形のコマを置いてしまうと、不自然なスペースができたり、角が鋭利なほど、角の先に目がいってしまって、絵を邪魔してしまうという、人間の視覚的な習性の問題があるから等の理由があります。
暗黙のルール③同じ形のコマは並べない
同じ形のコマをならべると言うのは、下の画像のようなケースを指すのですが、なぜこういう並べ方をしてはいけないかというと、先述した、右上から左下までSの字を描くように読むという、暗黙のルールが分かりづらくなり、どの順番で読めばいいのか、読者が見た瞬間、判断がしづらいと言うのが理由としてあります。
作者は、必ず読者がストレスをあまり感じず、どこからどう読めばいいのか、読みやすいコマ割りの配置を心がける必要があります。
暗黙のルール④右ページと左ぺージに同じコマ割りを並べない
こちらは中級者向けになりますが、コマ割りをする際、配置しやすいコマ割りがいくつかあります。
そのコマ割りだと、特に問題はなく読者も読み進めることができるのですが、配置しやすいため、つい作者は同じコマ割りの配置を多用してしまい、気がついたら、右ページと左ページが同じコマ割りになってしまっているという場合があります。
もちろんそれでも読めるのですが、同じ配置が続くということは、それだけ同じ展開が続いてる傾向が高く、読者に飽きられて離脱されてしまう可能性があります。
恐らく特に最近の商業誌のマンガで、右ページと左ページで同じコマ割りの配置がされているページがあることはほとんどないと思います。
こういった、コマ割りで読者を飽きさせないという、工夫も作者には必要になってきます。
以上のように、コマ割りをする際、暗黙のルールというのがいくつかありますが、これはあくまでも、読者にマンガを最後まで読んでもらうという目的が前提にあるルールですので、もし人に読んでもらうことを想定してマンガを描く場合は守った方がいいと言えます。
3:ページ数を決める
では実際にコマを割っていくという作業に入ります。
例えば
「実は前から君のことが好きだったんだ・・・」
「私も前から好きだったの・・・」
というセリフがあります。
この二行のセリフをコマ割りする場合どのようなコマ割りにするでしょうか?
おそらく、それぞれ一行ずつ、二コマに割るという方が多いと思いますが、二行だからといって、二コマに割る必要は全然ありません。
前後の流れなどから、ストーリーにおいてこのセリフの重要性を鑑み、この二行のセリフを、どのようにコマを割るかがコマ割りの醍醐味であり、漫画家の演出力と言えます。
その際、最も重要なのが、ページ数になります。ページ数があらかじめ決まっている場合、プロットを1ページの中にどのくらい振り分け、さらにそのセリフをどのコマに割らなければいけないのかが大まかに分かります。たった2セリフだからと言って1Pにおさめる必要もないわけです。
ストーリーマンガであれば、ストーリーに起承転結や起伏があり、ストーリーに対して、そのセリフがどのくらいの重要度かによってその演出方法は変わり、それによってコマ割りも変わってくるわけです
男:「実は前から君のことが好きだったんだ・・・」
女:「私も前から好きだったの・・・」
このセリフを、主人公とヒロインが言う場合と、脇役のキャラがいるのでは違います。
またこの後の展開で、クライマックスが用意されている場合は、この場面でコマを使いすぎると、後のクライマックスでコマが足りないなどのこともあります。
全体的なストーリーの流れから、このセリフがどのくらいの位置づけになるかを考えて、コマを割ることは非常に重要だと言えます。
ですので、まずはページ数を最初に決めて各シーンに何ページ割くかを、大まかに決めてから取り掛からないとあとで尻つぼみになったり、1Pに対してのコマが異常に多くなったり、最悪ページに収まらないという事態に陥ってしまいます。
特に広告マンガの場合はページ数が少ないことの方が多いため、注意しなくてはいけません。
またコマ割りをする際、1コマに何文字までや、1ページに何文字まで入れていいのか疑問に思うかと思いますが、特に決まりはありません。もちろんコマに文字を入れすぎてしまうと、読みにくいので。このくらいの文字量がいいというのはあるので、あまりそれを超えない方がいいですが。
文字が多くなっても、工夫して、読みやすくするというのもコマ割りの重要な役割でもあります。
4:ストーリーマンガと広告マンガのコマ割りの違い
ここでいうストーリーマンガは、単行本や少年ジャンプなどのマンガ雑誌に載っているマンガを指します。
ストーリーマンガと広告マンガとでは、同じマンガなのにコマ割りの違いはあるのか。厳密に言うと違いはありません。ただし、ストーリーマンガと広告マンガとでは読者に伝えたい情報の優先度や、内容が違います。
ストーリーマンガは、連載であれば、読者に続きを読んでもらうための創意工夫が必要ですし、連載でなくても、読者により深くマンガの世界観や、キャラクターの心情に共感してもらうことが制作にあたっての目標になることが多いですが、広告マンガの場合は、紹介したい商品やサービスなどに、読者が興味を持ち、実際に利用したり購入したりしてもらうことが目標になります。
ですので、極端に言ってしまえば、広告マンガの場合はいくらマンガの世界観やキャラクターに読者が興味をもち共感したとしても、紹介しているサービスや商品を利用したり、購入してもらえなければ成功とは一概に言えないのです。
では具体的にどう違うのか。
男:「実は前から君のことが好きだったんだ・・・」
女:「私も前から好きだったの・・・」
前述した上記のシチュエーションをストーリーマンガと広告マンガとで、どう変わるか、あくまで一例ですが比較してみましょう。
例:ストーリーマンガ
例:広告マンガ
ご覧のように、ストーリーマンガの場合は、シチュエーションやキャラクターそれぞれの心情をマンガで表現し、読者に感動や共感を与えることに重きを置いたコマ割りになっています。
一方、広告マンガの場合は、商品の良さを伝えるためのシチュエーションと展開になっています。
実際の案件になると、予算に限りがある広告マンガではページ数が一桁の場合がほとんどです。ストーリーマンガでよく見る、見開きページのような大胆なページの使い方をできる場合は、めったにないと言えます。それだけにコマ割りは非常に重要な作業になります。
少ないページ数の中で、過不足なく情報を伝え、さらにマンガとして読者をひきつけないといけませんので、高度な技術が必要だと言えます。
5:コマ割りをする際の注意点
プロットがもう完成している場合、ト書きというものがプロットにあると思いますが、これもコマ割りの際、非常に重要になります。
どういうことかと言いますと、単純にキャラクターが話しているだけでは読者にとっては、どこの誰で、いつのことかまったく情報量が少ないため理解に苦しみます。
所謂、5W1Hの法則のようにどこで(what)、誰が(who)、いつ(when)、なぜ(why)などの要素をマンガであっても伝えないといけません。つまりはそういったコマをマンガ内にも用意する必要があります。
さらに場所や時間が変わった際は、それがわかるようなコマを差し込んだり、同じような場面が続く場合は、インサートなどを挟んでいく必要もあります。
単純にキャラクターが話しているだけのマンガであっても、キャラクターばかりのコマを配置しても、伝えたいことがマンガで表現できる、とは限りません。
6:まとめ
コマ割りはマンガ特有の表現方法のため上手く表現できれば、最大限にマンガの魅力を発揮できます。
日本であれば、マンガを目にする機会は多いのでイメージがしやすく、実際にやってみると案外できたりする方も多いのではないでしょうか。
最近は、縦読みマンガやSNSなども台頭し、コマ割りの仕方も変化してきました。しかしいつの時代も、コマ割りによって伝えたい情報が、しっかりと伝わっているかが重要になります。
コマ割りも専門的なテクニックが求められる作業です。広告マンガを作るのであれば、プロの制作会社に依頼して、品質の高いオリジナルのマンガを確保しましょう。
弊社マンガビズでは、経験豊富な作家陣から依頼可能です。是非お問い合わせくださいませ。
その他、広告マンガの作り方シリーズのコラムは以下からご覧ください。
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